DIARY

修理

2011-05-30
私は二十代の会社勤めをしていた頃、会社の休みがが平日だった事も有り一人で神戸の街の骨董屋又はアンティークショップを訪ねて回るのがちょっとした趣味だった。どの店も若造を心良く招き入れてくれていたが阪神淡路の震災以降店を閉めてしまったところが多い。神戸の経済状況やアンティークと呼べる年代のものが品薄になって来た事が理由だが街の深みを出していた部分が今少ない事が寂しい。一軒の店の店主を久しぶりに訪ねたところ家具の修理を頼まれて作業場に持ち帰った。19世紀フランスのコンソールだが細い線でよく長い年月頑張ったなと言いたいし、小さいものだが作った人の繊細さと大胆さには見習うところが有る。また脚の間にある棚は豆の形をしていて、日本でも「まめまめしい」と怠りずにせっせと働く事を良しとするが、英語やフランス語にも同じようなニュアンスの言葉があり「full of beans 」は、元気いっぱいで、達者でという意味、ポジティブさを造形にした一つの表れなのだろう。古いものを前にそんな話をするのが面白いじゃないか。 次は20世紀のトレー・・・いやこれは私が十数年前に友人の結婚祝いとして作ったものだが長年の内に取手が破損してしまったとの事で修理を引き受けた。夫妻と共に時間を過ごして来ているのでキズも部材も出来るだけそのままにと思ったが、よくよく診断して先の年月の事を考えると取手部分の部材は新しいものに挿げ替える事にした。これはトレーとしては使いにくそうに思われるかもしれないが、料理好きの友人に客をもてなすトレーとしても、料理を盛るプレートとしても使えるようにとデザインしたものだ。「形に意味を」といつも思っている。