ご来場誠に有難うございました
一脚展+(プラス)2023 は9月18日をもって無事盛況のうちに会期を終了しました。
世の中の状況が昨年とは変わったことからか、国内外からの来場者が終始入り混じる会場の様子となり、会期中3,000人を超える方々に展示を観ていただくことが出来ました。
今年は 特別展の「一本の樹のものがたり」が会場の広い面積を占め、例年とは違うスタイルでの開催となりました。
この企画には約二年前から実行委員会の一人として関わり、樹の伐採や製材に立会い、乾燥工程を待ち、この樹の物語を想像し読み解き、一点の作品を制作したにとどまらず、思い入れの深い展示会となりました。
またこの企画は、六甲山材や丹波篠山材などの私たち(兵庫県の作家)の身近で育った樹に注目して制作に活用してきた、2019年からのプラス企画展の延長線上に位置ずけています。個人所有の一本の樹が役目を終えて伐られる事になった時も、私たちの近くで生命を育んできた大切なものとして向き合い、制作者が手を施すことによって様々な物になり、もう一度新たに役目が生まれるのです。この樹が立木として100年近く育ったものだとしたら、私たちが制作した物もそれくらいの年月、いえそれ以上に長く使われてほしいと願います。それはこの「一本の樹のものがたり」を想像力豊かに感じ、制作に取り組むことで成し得るのではないかと気付く機会となりました。
プラットフォーム DP – 12
木塊を組み上げていく水平で平滑な台/プラットフォームを大工さんに依頼し、どうせならと作業場の中央に据えた。重さの想定を伝えると予定以上にしっかりとしたものになった。先日は制作に協力してくれるメンバーとも打ち合わせをし、暑かった気候もそろそろ落ち着く、集めた木材との距離をもう一段階も二段階も縮めていきたい。
天神さんの楠 DP – 11
地域の氏神様である河上神社天満宮の神饌所(しんせんじょ)建て替えに伴い止む無く伐採された楠。処分場へ持ち込まれず保管されていたものを縁あって譲っていただいた。この木も今回の作品の重要な一部分にしたい。まだ材料になる木がどんなものか分からない時に描いたデザイン画とは随分形が違うが、目の前の形あるものを信じて進めて行きたい。今日は木の形を見えやすくする為に先ずは全体の皮をむいた。
窯出し DP – ⑩
約1ヶ月サウナのような人工乾燥機に入っていた木材が出てきた。すっかり整って、となれば後は何も心配ないが、今流行りの言葉のように木は簡単ではなく、割れは進み、捻れるところは捻れる。この木の塊から短期間で含水率を下げようとするので当然で、使い物にならないほど割れてしまったものもある。それでも乾いたのは表面だけだろう。しかし今後の方向性が見えて、カビ防止や、後から出てきてもらっては困る内部に潜んでいる虫対策にはなったとポジティブに捉えて荷下ろし、樹種分けにすすむ。
約 50℃に乾燥機内は保たれ、投入の最初と最後に蒸気が機内に回る。
一脚展+(プラス)2023 開催のお知らせ
来週末 9月2日(土曜日)から神戸・竹中大工道具館にて第13回 座る・くらべる一脚展+2023が開催されます。
今年のプラス企画は「一本の樹のものがたり」と題した特別展 会期は9月18日(月・祝)まで 入場無料
役目を終えて伐られる一本の樹と、私たち15人の木工家との出会いから今回の企画は始まりました。企画を進める中で彼(樹)を擬人化して16人による作品展になったとも感じます。樹の一生も私たちのものと同様に、またそれ以上に長いものです。会場に並ぶこの樹から出来た作品に触れながら、「一本の樹のものがたり」の中へと入り空想を膨らませながらご覧ください。
アトリエKKA 北島は初日の9月2日(土)、15日(金)、18日(月・祝)に在廊予定をしています。会場でお待ちしています。
尚、私は今回特別展のみの出展となりますが、例年の新作椅子展は10名の出展者による力作が会場奥に並びます。
桧 DP- ⑨
「淡路島桧」という呼び名は無いかもしれないが、島内の山を気をつけて見ていると常緑広葉樹の多い中にも所々杉、桧、を見つけることができる。林業としてのものではなく、孫子が家を普請する時の為にと裏山などに植えられたものだ。今が使い時という樹齢のものも多い。しかし・・現代の状況でなかなか使われている例は目にしない。
JINOprojectを共にする設計事務所ヒラマツグミはこれらの針葉樹を使って「淡路島の家」を積極的に設計している。今年の初め、その家用に桧の山に伐採に入るとの事で、私も今回のプロジェクト用に数本使わせてもらうべく、伐採チームと共に山に入り、立木を見て、木口を見て、木を選んだ。
運搬、製材、皮むき、桟積み、自然乾燥、選別、(今後人工乾燥も)どの工程も関わり仲間の協力も得て使えそうなものとして進んでいる。別に集めた広葉樹(雑木)とは違った、真っ直ぐなものとして使いたい。
江之浦測候所 DP- 番外
体調を整える為、墓参り、台風の接近もあり、3日ほど夏季休暇を取りました。とは言えちょっとした事務仕事から写真の整理などとなり。
今年の制作の刺激になるものを求めて2月に訪ねた小田原の江之浦測候所、ここは杉本博司氏が設計し収集したものが敷地全体に散りばめられている。計算ずくで配置されている物を巡り、思考が時空を超えるという心地よい感覚を持った。
(1枚目の写真は最寄り駅の根府川駅から太平洋を望む)
アートとは何か、その表現すべき対象は何か、考えることのできる場所である。
乾燥 DP- ⑧
淡路島から大阪南港まで、阪神高速3号線から5号湾岸線に乗り換え大阪湾を横目に見ながら走るコースはなかなか良い、六甲山系を背負う神戸の街並みや神戸港の洒落感を眺めながら湾岸線に入るとamazonなど流通の巨大倉庫が幾つかあり、橋、橋を渡り、北港はフンデルトヴァッサーの舞洲工場が右にみえ、左側にはUSJもちらり、また橋を超え、(この道はまるで滑走路 〇〇に続く ♪・・ではなく)更に先へ行くと工場夜景萌えの大規模プラントが並ぶが、今回は南港中で降り、お世話になる材木店を目指す。
今回のように大きく製材した木塊、また天然乾燥がままならない木材を人工乾燥機に投入するのは無謀とも言えるが、そのまま進めるより良いと判断し、ベターな方法を選んでベストを尽くす。この日は2トン車でこの大阪湾半周のコースを二往復した。
巨大な冷蔵庫のような乾燥機の中は温度、湿度が管理されたサウナの様な状態、温度は約50度に保たれている。
心なしかいつもグレーを帯びている大阪湾の海と このゴミ処理場のコントラストは・・ (中島PA)
復路、六甲が見えてきてこの辺りは西日も清々しい
ファンタジーとリアルと DP- ⑦
8月に入り工程は現実味を増す、仲間の協力も得て原寸模型を実際の空間に置いてみた、天井高8mのホールではどう見えるか、どれくらいの存在感を感じるか、現実的な検討ができた。並行して机上の作業も必要になるが、屋内外の現場での材料集めも最後まで粘ってみる。淡路島の木を集めて作品にしてみようとクライアントと話したこともリアリティーを持ち始める、様々な理由でその役目を終えた木々が思いのほか近い土地から集まった。天神さんや八幡さんでやむなく伐られたものは年輪の数が桁違いで立派、洲本城跡から支障木として来たものも風格あり、里山で育ったものもまた味わい深く良し、それぞれの木に力がある。その歴史に空想を膨らますのはその木に触れる者の特権、ファンタジーを積み上げエネルギーを放つリアルなものへ。
格闘・・DP- ⑥
製材所の製材機に載せにくい長さの無い木はやはりこのWood-Mizer / 簡易製材機で材にする。丸太の径が大きくなるとそれなりに大変だ。今回も3人体制で丸太と格闘、または大きな木と戯れたとも言える。連日の猛暑と重さで体力は消耗するが皆から幸せそうな笑みも溢れる。
一人ではどうにも動かない木(自然)の重さ、大きさを感じる事は、制作工程の中で大切で必要な時間ではないだろうか。
これらは薪用として引き取って頂く。/ 淡路里山を未来につなぐ会 の辻さん、よろしくお願いします。
集材 DP- ⑤
ここは淡路島中心部にある洲本城跡の武者溜(むしゃだまり)、主に石垣保全の為に伐採された木が山積みされている。1600年代から残ると言われている石垣を守るための伐採には理解をするが、これらの伐採木がただ朽ちていくだけの状況は如何に・・、以前から洲本市に掛け合っていた要望が、今月「伐採木の利活用者募集」というかたちになり、早速応募し集材を行う。
中でもスダジイ(椎の木)の大木は沼島やここ三熊山に群生地があり淡路島の象徴的な樹木の一つであると私は思う。朽ち初めてはいるものの、横たわっていた丸太の一部でも作品に取り込んでおきたいと思った。
スダジイの大木
/ 他にクス、製材した時の香りからヤブニッケイ、ホルト、など
何処そこに欲しい丸太があるのでと集材を依頼すると快く引き受けてくれる中田工務店の中田さん / 感謝
前回より径が大きくなりWood Mizer での製材は三人体制
機械・場所を提供して頂いている淡路工舎の藤田さん
今回も力仕事応援の岡田家具創造堂の岡田さん
新たにお願いした家具 zombi の石川さん / 感謝
材料/木材 DP- ④
7月はとにかく材料作り、必要量の倍 〜 それ以上の材積を集めて使えるもの、使うべきものを残して行くという方法を取る。
しかし製材を進めると、どの木も魅力的で今回使わなかった材も何かになるだろうという印象。今あるのは淡路島の近場から集まってきたものばかりです。
1m前後の短い木や変形の木はいつもお世話になっている製材所の機械では挽くのが危なく大量には作業できません、そこで今回はWood-Mizer(簡易製材機)を持っている淡路工舎さんの作業場をお借りしました。/ 感謝
力仕事応援の岡田家具創造堂の岡田さんありがとう/ 感謝